写真●米Hewlett-Packardでグローバルマーケティング、ネットワーク担当バイスプレジデントを務めるMike Banic氏
写真●米Hewlett-Packardでグローバルマーケティング、ネットワーク担当バイスプレジデントを務めるMike Banic氏
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 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2011年7月26日、都内で説明会を開き、ネットワーク機器の市場動向と、これに呼応する同社製品のラインアップを説明した。米3Comの買収によって拡大したスイッチ製品群の位置づけを整理し、導入する組織の規模に応じて分類した。同社製品の採用によって、5年間のTCO(総所有コスト)が下がるという。

 現在のネットワーク市場について、「相互運用性がない独自規格によって顧客を囲い込んでいる」と指摘するのは、米Hewlett-Packard(米HP)でネットワーク担当バイスプレジデントを務めるMike Banic氏である(写真)。この状況に対して米HPは、製品の優位性を保つことに加えて、市場での競争を歓迎し、これを促進することを、戦略の柱として重視する。

 競争相手と比べて、初期導入費用や維持費用などを下げる。日本HPでHPネットワーク事業本部長を務める大木聡氏は、「IT部門の支出は、運用・保守が70%を占めており、事業創出には30%しか使われていない。適正な価格で適正な製品を市場に投入し、事業創出のウエートを増やす」と、同社製品にかかる費用が安価であることを強調する。

 Mike Banic氏も、米Gartner Researchのレポート「Debunking the Myth of the Single-Vendor Network」を引き合いに出して、費用の安さを強調。同レポートでは、すべてを米Cisco Systems製品でそろえるよりも、デュアルベンダー環境のほうが、5年間で15~25%のTCOを削減できる、としている。同様に、米HP製品をCisco環境に加えることで同様のコスト削減効果が得られるという。「ベンダーを1社に統一すればTCOが下がるという説は嘘」(Mike Banic氏)。

製品分類を整理、ネットワークは単層化へ

 米HPでは、今後のネットワーク市場での競争にあたり、製品ラインアップを分かりやすく整理した。背景には、2010年に米3Comを買収したことによって中国のH3C Technologiesのスイッチ機器を手中に収め、製品ラインアップを広げたことなどがある。これまでは、コアやエッジなど製品カテゴリごとに分類し、カテゴリ内でのバリエーションの広さをアピールしてきた。今回これを改め、製品を導入する組織の規模などに応じて、Fablic(データセンターなど)、Campus(オフィス)、Branch(リモート・オフィス)の3つに分類した。

 2011年後半には、新製品として、Campus(オフィス)のコア・スイッチ用途のシャーシ型スイッチ「A10500シリーズ」を提供開始する。特徴は、シャーシ型のスロットあたりの帯域が160Gビット/秒と広いこと、など。

 ネットワーク機器の市場動向としては、クラウド(仮想サーバー環境)の到来によって、従来型の多階層アーキテクチャ(コア、アグリゲーション、エッジの垂直型)から、階層が少ないアーキテクチャ(コアとエッジの2階層、水平型)への移行がある。スイッチ機器には、この変化に合わせた機能拡張が求められている。

 ネットワーク階層を減らす試みの一つとして同社のスイッチ機器が備える機能が「IRF」(Intelligent Resilient Framework)である。IRFを搭載した複数のスイッチ機器をスタック接続することで、全体を論理的に1台のスイッチとして運用できる。類似の機能は各社が用意しているが、IRFは米3Comがもともと搭載していた歴史のある仕組みであるという。IRF以外の実装手段は、今後、市場の標準化動向などを踏まえて採用していくとしている。